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企業のコンプライアンス

第三者に裁定させる 違反指示への申立て認め

 労務管理を達成するには,少なくとも企業がコンプライアンスを守る体制を確立することが必要です。

企業がコンプライアンスを守らない場合,以下の弊害があります。第1に,企業と労働者との間のトラブルが発生するリスクを高めます。例えば,労働基準法で定められた残業代を支払わない場合は,労働者が企業に対し,訴訟をする可能性があります。第2に,労働者が企業の信用,名誉,利益等を侵害するリスクを高めます。例えば,労働者がマスコミ等に企業の違法行為を通報したり,労働者が独自の判断で違法行為をしてしまうことを助長するおそれがあります。

[コンプライアンスの確立]

コンプライアンスとは,法令を遵守し,企業が社会的に非難される行為をしないことです。

コンプライアンスを確立するためには,@コンプライアンスを守るための具体的なルールを社内規程などに文書化すること,A具体的なルールを労働者に対し,教育し,実践させること,B社長が本気でコンプライアンスを守ることを宣言し,実行すること,Cコンプライアンスを守っているか,日常的に監査し,違反行為は速やかに是正すること等が必要です。

1,コンプライアンスを守るためのルールの文書化には,具体的な法令を明示し,その法令に違反しないための細則的ルールまで記載するべきです。法令のみでは,具体的な行動基準がわかりにくいので,ルール化の際には,厚生労働省告示などの指針等も踏まえるべきです。例えば,セクハラ禁止については,「職場において,労働者の意に反する性的言動をしてはならない。」と記載します。

2,労働者に対し,コンプライアンスの教育する際は,社内規程などの文書に,裁判例を記載するのがベターです。例えば,違法とされたものの例としては,セクハラ事件において,表面上は口頭の同意があったが,内心では上司の性的言動が嫌であった場合があります。

3,コンプライアンスよりも,売上げを増大させることを優先すべきであると労働者が勘違いしている場合があります。したがって,社長は,本心からコンプライアンスを守ることが大前提であると考えていることを労働者に認識させることが必要です。

4,コンプライアンス違反を防ぐためには,その機会を与えないようにするべきです。例えば,複数の者で多重にチェックする体制を作ります。また,上司からコンプライアンス違反の指示がなされた場合,部下に異議申立を認め,第三者に裁定させる体制を作ります。

使用者は,コンプライアンス違反をしなければ,達成できないような無理な業務命令をするべきではありません。

労働者は,コンプライアンスに違反する行為をした場合,当該企業において,昔から違反行為が行われていることや同業他社も違反していること等を言い訳にすることがあります。しかし,過去や他社の例は,違反行為を正当化するものではないことを労働者に理解させるべきです。

[労働者の自覚と責任]

コンプライアンスを守るためには,使用者のみならず,労働者も自覚と責任感を持ち,自らの義務を履行しなければなりません。以下,労働者の義務について述べます。

使用者と労働者が労働契約を締結すると,使用者が賃金支払義務を負うのと引き換えに,労働者は,@労働を提供する義務(労働義務)を負います。

労働義務の内容としては,A誠実に労働する義務(職務専念義務),B使用者の業務命令に従う義務,C使用者の人事権に従う義務,D職場規律を維持する義務がメインです。

職場規律を維持する義務の中に,Eセクハラをしてはならない義務,Fパワハラをしてはならない義務が含まれます。

労働者は,労働契約の付随的義務として,信義側上,G使用者の名誉・信用を毀損しない義務,H使用者の秘密を守る義務,I在職中の競業避止義務などを負うと考えられますが,念のため,誓約書,労働契約書,就業規則等に上記の義務を明記するのがベターです。のみならず,就業規則等に,Jコンプライアンスを守る義務を含めて,労働者のすべての義務を記載するべきです。書面で明示することにより,労働者の自覚も高まり,義務違反の場合にその責任を追及しやすくなります。

労働者がその義務を履行しない場合は,使用者は,人事考課としての降格,配置転換,普通解雇,損害賠償請求,懲戒処分などの措置をとる。そのような措置をとることを事前に労働者に明示し,予測可能性を与えて,労働者の義務違反を未然に防ぐべきです。

  企業は,コンプライアンスを守ることにより,労働者とのトラブルを防止し,企業の利益を守ることができます。