@ 特定の社員に対して,退職勧奨をするという決定をする前に,なぜ,特定の社員に対し退職勧奨する必要があるか,合理性があるか,について,社内で十分に分析,検討することが必要です。なぜなら,直接の上司が,個人的感情から,恣意的に部下に対する退職勧奨を人事部に進言してくるケースがあるからです。そこで,特定の社員に問題があり,その問題について,社員に指導し,改善を求め,十分,指導したが改善されなかったこと,今後も改善が見込めないことを確認する必要があります。
A 指導・改善の経過については,日常的に記録し,証拠を保全する必要があります。改善・指導は文書で社員に交付し,その結果は,毎回,社員から報告書として提出させるべきです。改善・指導には,退職に追い込むという不当な動機・目的があってはなりません。真実,社員を改善するという動機・目的が必要です。
B 退職勧奨をする場合は,会社から,突然,ストレートに「退職してくれ」と伝えるのはトラブルの原因になります。退職勧奨のポイントは,社員自身が「自分は退職した方がいい」と自発的に考え,退職することを納得して頂くことが必要です。人間心理には,作用・反作用の法則が働きます。会社から,突然,「君は会社に必要がないから,辞めてくれ」と通告されれば,社員は,「入社したときは歓迎してくれたのに。これまで一生懸命,仕事をしてきたのに。会社に対し不満があったのに我慢してきたのに。」という思いがありますから,感情的に反発し,抵抗する可能性が大きいのです。
C 退職勧奨する場合は,社員の事情を親身に考える姿勢が必要です。社員の性格,年齢,健康状態,資格・技能,業務成績,勤務態度,家族の状況(独身か,妻が働いているか,親を介護しているか,子供はニートか等),経済的状況(住宅ローンがあるか,消費者金融からの借金があるか等),趣味(パチンコ・競馬,酒・煙草,株取引・FX)等について,社員の立場を十分,考えるべきであり,会社も社員の立場を十分,考えた上で,やむを得ず退職勧奨をしていることを社員に了解して頂く必要があります。
D 会社にも人員が過剰である事情があれば,その事情を社員に説明する必要があります。
E 社員の立場を考慮した結果,社員に対し割増退職金を支給するという提案をする必要がある場合もあります。
F 社員が退職を自発的に決断したときは,必ず退職届を提出させるか,退職合意書に署名させる,必要があります。後日,退職した事実が争われないように書面を提出させ,証拠保全をするべきです。